2011年1月11日火曜日

なぜ揉める?捕鯨問題

2010年11月30日、ソトコト編集部スティーブ・ジャービスさんのお話を聞く機会に恵まれました。彼の制作する雑誌について、また、取材した記事の中身まで、細かいお話を聞くことが出来ました。その中で私たちは、彼が実際に取材した「シー・シェパード」が、日本の捕鯨について批判しているという話から、日本や他国がどのように捕鯨を扱っているかを検証したいと考えました。自国である日本、捕鯨に関連するシー・シェパード、そして捕鯨の文化が存在した英国を取り上げ、捕鯨がどのように考えられているのか、スティーブさんの意見も絡めて紹介していきたいと思います。

始終にこやかに話してくれたスティーブさん

■世界の中の日本

日本の捕鯨の立場

日本は国際捕鯨委員会(IWC)に1951年から加盟しています。IWCは「捕鯨の適当な保存を図って捕鯨産業の秩序ある発展を可能にする」ことを掲げ、1946年に設立されました。2010年5月までに88カ国が加盟、うち捕鯨支持国(日本を含む)は39カ国、反捕鯨国は49カ国です。IWCはクジラの生存数激減に歯止めをかける為、1982年に商業捕鯨モラトリアムを採択しました。日本はモラトリアム採択後、「調査捕鯨」という形で一定数のクジラを捕獲するようになります。

捕鯨賛成国…日本、ノルウェー、アイスランド、ロシア、デンマーク、カンボジア ほか
捕鯨反対国…英国、米国、ブラジル、オーストラリア、フィンランド、フランス、ドイツ ほか

また、日本だけでなく、米国のアラスカエスキモー、ロシアのチュクチ先住民による先住民生存捕鯨、モラトリアムに異議申し立てをしているノルウェーの商業捕獲は現在でも行われています。

■日本の捕鯨

捕鯨の歴史

日本捕鯨協会に拠ると、日本は先史時代からクジラと生きてきたとされています。九州では縄文時代中期から後期の遺跡で、クジラの脊椎骨を製造台にして作られた土器が多く発見され、また712年に成立した『古事記』にも、クジラが登場しています。捕鯨のことを「勇魚取(いさなとり)」や「鯨突き(くじらつき)」と呼んで、古くから行ってきたとされています。長い歴史の中でクジラが信仰、伝統工芸などと結びつき、伝統を作りました。江戸時代には食用だけでなく、鯨油を使用し、骨やヒゲは工芸品の材料に用いました。現在は国際捕鯨取締条約に基づいて、南極海や北大西洋で調査捕鯨を行っています。

調査捕鯨は、南極海捕鯨類捕獲調査と北西太平洋鯨類捕獲調査があり、鯨類資源の科学的データの蓄積し、資源の不確実性を覆う為に行われています。対象として、資源量が豊かとされるミンククジラのデータを採っています。

日本の捕鯨に対する見解

日本は調査捕鯨をクジラの生態を確かめる為に必要な措置であるとし、またIWCに対してモラトリアムによって困窮している伝統的捕鯨地域社会を救済する為、また伝統的文化の為、長年にわたり捕鯨の再開を訴えています。調査捕鯨では、ミンククジラの肉には汚染物質がほとんどなく、安全であること、南極海にミンククジラが多く生息しており、ミンククジラ資源が健全で増加していることなどが(財)日本鯨類研究所から報告されています。

■反対する人々

シー・シェパード

シー・シェパードはポール・ワトソン氏によって創立された海洋生物を保護する為の環境保護団体です。海を破壊する違法行為を阻止する為、介入活動を行っています。具体的には公海や海洋保護区での密漁、流し網漁、捕鯨などが対象です。行動を起こすのは「違法行為」である確かな証拠がある場合です。クジラだけでなく、アザラシの子、ウミガメ、サケ、サメ、タラ、マグロ、イルカ、ナマコ…など、様々な生物を守る為に活動しています。

シー・シェパードは過激な阻止行為によって各国の警察組織にテロ団体として指定されています。2010年1月には同団体のアディ・ギル号と日本の監視船第2昭南丸が衝突する事件が発生しました。

ワトソン氏は日本に対し、「日本文化、日本人にも尊敬を抱いているし、国の歴史も学んできた。しかし、日本ほど進んだ国が、保護区でクジラを殺す行為をなぜやめない?自然崇拝に根ざした文化があるというのに。」と述べ、日本の捕鯨を反対しています。

カメラを片手に持つ記者を乗せ、レーザー光線で威嚇しているシー・シェパード

反捕鯨国 英国

反捕鯨国は日本に対して、「日本の調査捕鯨は疑似商業捕鯨だ。」と指摘し、また「鯨の生態調査は殺さなくてもできる。」、「調査の為に1000頭以上も長い間獲り続ける必要はない。」とし、日本の捕鯨行為に批判をしています。その反対国に属している英国は、かつて捕鯨文化を持っていた国です。クジラからの油を利用し、燃料などに利用していました。しかし、20世紀中頃からクジラの生存数現象、そして鯨油に代わる燃料などの開発で、捕鯨に対する考えが変化します。それが現在にも通じる「捕鯨は残酷である」という反捕鯨国の主張に変わってきました。英国はこのような点から、決して文化にとらわれることなく捕鯨問題を受けとめています。

■捕鯨問題とこれから

スティーブさんは捕鯨に対して、「僕は大反対とまではいかない。」と言います。国の文化や考え方の違いについては、「簡単に和解できるような解決策はないかもしれない。シー・シェパードの人たちを例にとっても、彼等は彼等の主張を守り、危険な南極海に出て行く。南極海が最も自然な海であり、そこを守りたいという意思が強い。それと日本の漁船が衝突してしまう。互いの考えがうまくまとまっていく方法はないと思う。」と、自ら取材した経験を交えつつ話してくれました。

捕鯨問題は他国との関係の中でも注目されている問題です。国や文化、環境問題など、様々な視点から捕鯨について考えることはこれからの日本の未来に必要だと思います。この記事を読んでいる皆さんも、捕鯨についての見解を深め、どのようなことが人にとって、国にとって、鯨たちにとって良い方法であるのかを探ってみてください。

他雑誌の記事と比較しながら、シー・シェパードについて熱く語ってくれたスティーブさん

【出典】
http://gigazine.net/news/20100106_sea_shepherd_ship_collision/ (2011.1.11取得)
http://www.whaling.jp/(2011.1.11取得)


記者:伊藤梨紗・高梨杏奈

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